
<漁業12団体>一斉休漁を検討…今夏、燃料費高騰を理由に
6月5日12時32分配信 毎日新聞
主要な漁業団体である大日本水産会、全国漁業協同組合連合会(全漁連)など12団体が、漁船の燃料費高騰を理由に今夏、一斉に休漁することを検討していることが5日わかった。日本かつお・まぐろ漁業協同組合、全国大型いかつり漁業協会、全国さんま漁業協会などが含まれ、実施されれば広範な魚種で漁獲が減少することも予想される・・・
鎌倉に引っ越してきた理由のひとつが、うまい魚を食べたい!という目論見だったんですが、越してきていきなりこんなニュースを見てしまいました。参りましたねえ・・・このあたりの沿岸漁業やってる漁師さんが今回の一斉休漁に参加するのかどうか定かではないですが、ちょっと心配です。
私自身が鹿児島県最南端の与論島という島で生まれたものですから、普通よりは漁師という職業を身近に感じて育ってきているのではないかと思いますが、やはり沿岸漁業の漁師さんってのは個人営業の人が多くて、当たれば儲かるけれども、大体においてカツカツの状態でなんとかやってきているという状態が、ここ数十年続いていたのではないでしょうか。
ある程度大きな会社であれば、ここの部門は今もうかってないけど、違う部門が調子いいから給料出せるよ、ってことも期待できるんですが、小さな会社や個人事業主では商いの柱は一本しかないので、そこにヒビが入ると一気にガタガタっと崩れてしまうんですね。
今回の一斉休漁は、原油高騰で燃料代が上がり、操業すればするほど赤字が拡大してしまう、という恐ろしい状況が日本中で起きてしまったためです。といっても先日のガソリン暫定税率の復活とは関係ありません。もともと農業あるいは漁業用のA重油(ほんとは成分的には軽油なんですけどね、日本では焼酎の甲類、乙類と一緒で、税金を細かくかけていくために細分化するためこんな名前で呼んでるんだそうです)は、用途限定で無税になっているので、ここのところの原油高騰の影響がダイレクトに出ているってことです。
しかし、実はこんなことになってしまったのは、原油の値段もさることながら、日本が世界一魚を食べる国だ、ということも大きな理由になっているんです。

昔から、日本は魚をはじめとした水産物を日常的なタンパク源として食べてきました。肉類、特に牛や豚といった四ツ足のものは明治期以降に普及したもので、どちらかというと高級品、ぜいたく品として広まっていきました。今の子供達はいざしらず、40歳以上の方々には実感として「肉は高級なもの」という記憶があるのではないでしょうか。それに比べると魚は「庶民が日常的に食べられる、安いもの」というのが常識です。「魚は肉よりヘルシー、しかも安い!」「ちょっと家計が苦しいから粗食にしよう。じゃあ焼き魚にするか」という話はよく聞きますよね。こういう常識をみんなが持っていたからこそ、日本人はずーっと、世界で一番魚を食べる民族でいたのでしょう。
ところが、海の向こうでは事情が異なります。欧米では元々は魚をあまり食べない国が多かったのですが、ダイエットや栄養学にみんなが関心を持つようになってから、「魚は人間の身体に良い栄養をたくさん含んでいて、なおかつ低カロリー」という評価を受けるようになりました。これは、そのまま健康食品やダイエットサプリメントのキャッチコピーに使えそうなくらいの高い評価ですよね。というわけで、元々肉類を日常品と考えていた彼らにとって、魚はより位置づけの高い食品となり、「多少高くても買う価値のあるもの」ってことになったんですね。ですから、おそらく日本よりは魚の価格上昇の許容範囲も広いのではないでしょうか。実際に今イギリスを中心にヨーロッパでは「持続可能性を考慮した漁法でとった魚」、これはいわゆるエコ絡みの話なんですが今後将来に渡って魚の生態系を維持して、安定した量の漁獲量を維持できる方法でとった魚については公的な認証マークがつけられて、そうした認定を受けていない魚の2割~3割増しの価格で販売されているんです。
さて、日本では魚の値段を上げようにも、いままで魚は安いものだ、と思い込んでいた人々の意識を変えるところから始めなくてはなりません。これはずいぶんと長い時間がかかるのではないでしょうか。あるいは、今回の一斉休漁で、スーパーの店頭や飲食店から魚が消えてしまうなんてことになったら、一気にみんなの意識が変わるのでしょうか?まさか日本でそんなことになるなんて、と思いつつ、現に今もバターが店頭から消えているのを見てしまうと、現実に起こりえることなんじゃないか?という気がしてきます。
しかし魚の値段があがれば、漁師やスーパー、飲食店のみなさんもほっと安心できるかというと、話はそれほど簡単ではないようです。
あたりまえですが、右肩上がりの経済状況でないならば、値段が上がれば、売れる総量は減る。これは厳然たる事実です。しかし、個々の漁師やお店がそれに合せて柔軟に漁獲量や売り場、メニューを縮小できるわけではありません。それぞれが生活や経営を維持するための必要量というのは、消費者が買い物の量を変えるのと同じように簡単に変えることはできないのです。ということは、生活や経営を維持するための量を確保することが出来たものは生き残り、出来なかったものは廃業という、生き残り競争がやってくることが確実なわけです。
そんな状況下で生き残っていくためにはどうすればよいのか。より高く買ってくれる海外へ輸出する道を選択するのか、それとも市場のような公開取引をやめて、市場外流通で特定の流通ルートと組んで運命を預けるか。いずれにせよ個人営業のままでは漁師の側からはほとんど手の打ちようがないのではないでしょうか。かといって漁協や漁連単位ではなかなか皆をまとめきるのは難しいでしょうし、官庁は食料自給や縦割構造のしがらみですばやく動くのは無理でしょう。水産流通、食品流通に携わる企業の迅速かつ大胆な対応に期待するしかないのではないかと思います。どこがその任を負うべきとは言いませんが、期待しています。